コラム

第三者には理解されないからこそテクニックが必要になる

先日 Twitter でもつぶやきましたが、若年死別だろうが何だろうが、死別体験というのは、その個人にとっては人生を揺らがすほどのインパクトを持っていますが、他人から見ればそれは「他人様の死」というだけのことであり、下手をすれば「暗い話題だ」という程度ものでしかありません。

 

とても冷たい言い方かもしれませんが、しかしながら、この温度差に気づかないでいると私たちは大きな傷を負うことになります。そういうことの無いように、徐々にテクニックを身に着けていく事が大切です。

他人の死は他人の死でしかないという当たり前の事実

もし、あなたが、地球のどこか、日本以外の国で誰かが心から愛する人を失ったという事実を知ったとしても「それは残念ですね」と思うかもしれませんが、その誰かさんと同じくらいの哀しみを感じることはできません。

そもそも誰が亡くなったのかさえ、把握できない状態では、哀しみも半減してしまいます。これは誰しも当てはまりますが、いわば無関係の死については、そこに感情を持っていく事自体が困難です。

そんなことは言われなくても分かっているのにもかかわらず、私たちは自分の愛した人を失うと、それがすべてだと言わんばかりにそれを強く主張したくなります。(かくいう私自身もそうでした)

道をすれ違うだけの人にとっては全く関係のない話なのに、「彼女はここが素敵だった」「彼はこんなにも素晴らしい人だった」といったことを伝えたくなってしまうのです。

自分発信は聞いてもらいたいと思うのに、相手発信(他人発信)は、あまり受け止めることができません。

特に死別直後は、冷静な判断が難しい時期でもありますのでこういったギャップに気づきにくくなります。

第三者への伝え方

とはいえ、哀しいのは事実です。嘘ではありません。あまり無いとは思いますが、どうしても第三者に伝えなければならない場合には、その伝え方がより重要になります。

ポイント1:事実のみを伝える

例えば、「妻が昨年他界しまして」と言うだけでも十分でしょう。「闘病の末」や「すごく苦しくて」といった言葉はあくまでもこちら側の見え方であり、第三者はそれを言われてもどうしようもありません。

相手が理解のある人であれば「それは残念です」「ご愁傷様です」と接してくれるでしょうし、それ以上話が広がることはありません。

しかし、中には興味本位で根掘り葉掘り聞いてくる人もいます。そういう人は共感しているわけではありませんし、上記の情報だけで十分でしょう。答える義務も義理もありません。

下手に話し込んでしまうと、価値観を押し付けられたり、聞きたくないフレーズが出てしまうこともありますので注意しましょう。

ポイント2:冷静になる

もしかしたら、こちらの方が重要かもしれませんが、まずは自分が落ちついて話ができる状態であることです。私自身も、死別直後は、親しい人に話をする際であっても、唇がワナワナと震えてしまい、うまく言葉が出ませんでした。

そういう時には、まだ他者に伝える準備ができてないということですから、少し時間を置くことも必要です。このような前提の上で、冷静に話す事が大切です。

人は不思議と、感情的になればなるほど、伝わりにくくなってしまいます。大切な人が亡くなっているのですから、機械のように、ニュースを伝えるかのようにする必要はありません(実際にそんなことはできません)が、感情が入り過ぎてしまっても通じません。

そうではなく、まず「夫が半年前に亡くなりました」ということを淡々と伝えるのみで十分でしょう。

そういう思いを切り分けられるからこそ、愛する人の死には涙することができる

今回のテーマはちょっと冷たく感じるかもしれませんが、若年死別体験者と、未体験者との間はかなり大きな隔たりがあり、それは決して埋めることができないため、その間で話をしたいのであればそれ相応のテクニックは必要だということです。

現実として、人間はすべての人の死に敏感ではいられません。でもだからこそ身近な人の死には心から涙するし、愛おしい人の死ならなおさら大きなショックを受けるのです。

それぞれ別物なんだという前提を理解しておくことで、周囲の心無い言葉に傷ついたりせず、自分自身を大切にグリーフワークを進めていくということをお勧めしています。

 

今日はそんなことを想いながら過ごしています。

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dan325

10年ほど前に妻を癌で亡くしました。若年死別経験者。愛する人や大切な人の喪失や死別による悲嘆(グリーフ)について自分の考えを書いています。今まさに深い哀しみの中にいる方にとって少しでも役に立てれば嬉しいです。

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