グリーフの知恵 グリーフワーク

言語化について

自分の気持ちを言葉にする―この単純な作業が思わぬ効果を生むことがあります。

特に、死別時期前後を言語化することは大変重要です。すぐに実践できて効果が出やすい「言語化」を解説します。

徹底的に言語化を薦めるワケ

言語化を推薦するには当然理由があります。普段あまり文字に触れていない人だからこそ、実践すべきですがそうは言っても習慣が無ければ継続できません。そのため「なぜそれをするのか」ということを認識するところからスタートしましょう。

言語化を強く薦める理由はいくつかあります。

冷静になれる(客観視)

1つ目は自分自身が冷静になれるということです。

人は、自分の感情を誰かに説明したり、文字に残そうとするとき、アウトプットするためにその感情を言葉に置き換える作業を頭の中で行っています。

例えば、相手への好意を感じたとします。その時、どんな表現をするのが正解でしょうか。

「この人のことが大好きで大好きでたまらない!」

「愛してる!」

「世界中の誰よりも・・・」

「あなたしか見えないの」

「こういうところがカッコいいよね」

無数の表現がありますが、このどれもが正解です。大切なのは自分がしっくりくる言葉を使おうとするとき、自分の持っている語彙の選択肢の中から選ぼうとします。

どんな言葉を選ぶかは、自分自身にかかっているということです。

そしてしっくりくる言葉を選んで表現できたとき、相手にとってはもちろんですが、一番効果が高いのは「自分自身が自分の感情を客観的に見ることができる」ということです。

つまり「ああ、自分はこう思ってたんだ/感じてたんだ」と再認識できるようになります。

自分の感情を外側に出すことで、その感情を理解できるということです。

これができると、再現性が高まるので同じような感情を抱いたとき、同じ言葉を使うことができ冷静になることができます。

振り返ることができる(記録)

記録という観点からも言語化は非常に重要です。

残念ながら人間は忘れていく動物です。これは良いか悪いかは別として、グリーフに関しても例外ではなく、大切な人のすべてを完全に記憶することはできません。

だからこそ言語化し記録することが重要なのです。記録することによって「その時」を容易に思い出しやすくなります。また、どんなイベントがあったのか、何をしたのか、自分の気持ちはどうだったのかなどを後から振り返ることができます。

一周忌や三回忌などをはじめとしたイベント等をベンチマークとして設定すると時系列に沿って遡りやすく、またその時の自分の感情も確認しやすくなるため、その時点からの自分自身の変化にも気づきやすくなります。

「3年前はこんな風に思っていたのか・・・という発見もありますし、それによって自分自身のグリーフプロセスがどう変化していっているのか、現在位置を把握しやすくなるのです。

しっくりくる表現を見つけると自分の感情の置き所が定まる

1つ目と重複しますが、自分自身の感情を表現できるようになると、それ自体が意味を持ち、自分自身の理解を促進させてくれます。「ああ、この気持ちは○○だ」と思えること(言語化)によって落ち着きを取り戻したり、他者へ伝えやすくなります。

納得感、とでもいうべき様々な感情の整理ができるようになるため、自己内部での解釈や意味づけなどもスムーズになります。

他者にも伝えやすい

また他者にも自分の気持ちや感情を伝えやすくなります。

「今、こんな気持ちなんだよね」という言葉が相手にしっかり届けば、相手の行動も変わるでしょう。

「なんかモヤモヤする」だと、相手は困っていること自体は分かりますがどうすればいいか分かりません。

もちろん、これ自体が悪い訳ではありませんが、具体的な言葉を持つことによって、「モヤモヤ」部分を他者に説明できるようになります。

表現を探す作業自体がグリーフワークになる

「自分の感情を言語化しよう」と思った時にぶつかるのがボキャブラリーの少なさです。

日常的に読書をしていて小説家のような文章を書いている人なら、豊富な語彙を駆使して自分に合った言葉を紡ぐことができるかもしれませんが、残念ながらほとんどの人はそうではありません。

仕事でメールをたくさん書いているとしても、ビジネスとは違います。ビジネスでは感情をむき出しにすることはあり得ません。

つまり、言葉が少ないと自分の感情にピッタリな表現が見つからないのです。

その場合は、本を読む、映画を見るなどして、「ああ、この表現、自分の今の感情にピッタリだ」と思えるものを探してストックすることができます。

以下のページも参照してください。

死別の哀しみを学ぶ書籍

死別の哀しみを学ぶ映画

言語化のツール

さてしっくりくる表現を見つけたら、今度は実際に表現する場を決める必要がありますが、これらは特に自由でしょう。

ただし、以下のうち、ブログやnote、Youtube など外向けに公開するものについてはどうしても他者視点が入ります。そこでネガティブなコメントや評価がついたり、またそういう不安を抱えながら発信するくらいならやらないほうがいいでしょう。

一番は誰も見ないであろう「日記」を書くことです。日記など大げさということであれば、チラシの裏でも構いません。

誰にも見られないからこそ、本当の自分の気持ちを書くことができるのです。

すぐに始められるメディアや場

  1. 日記

  2. チラシの裏

  3. ブログ、Web、note

  4. Youtube や Podcast

このように、自分に合ったものを使って言語化することをお薦めします。すぐに効果は出ませんが、蓄積することによって心境の変化が手に取るようにわかります。

 

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dan325

10年ほど前に妻を癌で亡くしました。若年死別経験者。愛する人や大切な人の喪失や死別による悲嘆(グリーフ)について自分の考えを書いています。今まさに深い哀しみの中にいる方にとって少しでも役に立てれば嬉しいです。

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