コラム

遺族の哀しみは決して周囲には理解されない

遺族の哀しみは決して周囲には理解されない

先日、Twitter にてこのようなアンケートをとらせていただきました。ご協力いただいた方、どうもありがとうございました。

「自分自身の死別体験による悲嘆感情」を100%とした場合、そのうち、他者(家族、親戚、友人など)にどれだけ伝わっている/理解されていると感じていますか?

その結果がこちらです。

 

 

アンケートにご回答いただいた8割程度の方が「伝わってない。伝わっていたとしても 30%~50%の間」とのこと。

ハッキリ言えるのは「やっぱり、遺族の死別の哀しみは他者には理解されない」ということです。

細かく見ていきたいと思います。

「全く伝わっていない」と「30%以上は伝わっている」が大多数を占める

まずアンケートの結果として目につくのは「全く伝わっていない」と「30%以上は伝わっている」が大多数を占めているということ。ご回答いただいた方の中で理由も教えてくださったのでこちらも簡単にまとめます。

  • 自分が今まで通り気丈に振舞っているから
  • 周囲の数人(友人やカウンセラーなど)は理解しようとしてくれたがその程度
  • 相手には知識や経験がないのでそもそも話せない
  • (経年すると)「まだ哀しんでいるのか」という周囲の様子が分かるので言えない
  • 周囲には死別の事実は伝わっているが、その後のどんな行動や言葉が辛いかは理解されない
  • そもそも分かってほしいとも思っていない

その他にもいくつかご意見をいただきましたが「理解してほしい」と思う一方で「理解されたくもない」という気持ちもあるようで、遺族の複雑な心境を垣間見ることができます。

参考までに私自身が投票するとしたら「30%以上は伝わっている」になりますが、50%は伝わってないし、理解されたいとも思わないという感じです。

「50%以上は伝わっている」「70%以上は伝わっている」はレアケース

ちなみに、70%以上伝わってるよ、という方はやはり数としてはかなり少なかったのですが、感覚的には非常に納得できます。周囲の理解があるというのはとても貴重なケースだと言えます。

周囲と連携しながらグリーフプロセスを進めることができるのは個人的にも羨ましいですし、それは使わない手はありませんね。

「寄り添う」ことの限界

カウンセリング等では「寄り添う」ことを主としているケースもありますが、上記のように遺族側にはそれが伝わっていなかったり、また初めから拒否していることもあるため、周囲の方々が(たとえプロであっても)完全にフォローするのは難しいのかもしれません。

※私自身は当時カウンセラーの方にもサポートグループにも助けていただいているので感謝の気持ちでいっぱいですが、やはり全部は難しいなと思うこともありました。

ただ、結論として「だからダメなんだ」ということを言いたいのではありません。

むしろ逆なのです。

伝わらないからこそ、自助努力が必要

そうなのです。

「全部は伝わらないし、伝える気もない。分かってほしいけど、分かってほしくもない」という遺族の気持ちをベースに考えるなら、「自分でどうにかするしかない」という結論になります。

哀しみに飲み込まれている状態でもいいのか、それとも少しでも改善したいと考えるのか、またはそれらを昇華して誰かの役に立ちたいと思うのかなど、遺族によっても考え方は様々です。そしてそのどれもが選択の結果であり正解でしょう。

ただもし「もう少し分かってほしい」と思うなら、伝えるためのテクニックは必要になります。以下のコラムにも書いています。

第三者には理解されないからこそテクニックが必要になる

 

コラム執筆時はあくまで自分の経験則および周囲の死別経験者の方々から聞いた内容からですが、今回のアンケートによって裏付けられ、決定的になってしまいました。

結局、そういうことなんですが、周囲の人間に理解してほしいという希望があるなら、自分の言葉で自分のことを説明できるスキルやテクニックは必要になるということです。またそのための学習は必要になります。

※ちなみに、同じ経験者同士であってもその死因や経緯が異なれば持ち合わせる感情も違います。哀しみは個人的なものであることを前提とするなら、やはりすべてを伝えるのは不可能に近く、だからこそ伝える努力や技術は必要になります。

良い意味で「周囲に期待しない」からこそ

これもまた同様の意味ですが「相手に分かってほしい」という期待をもってしまうと、それが叶わなかった時に大きなショックを受けるため、はじめからそういう期待はしない方が良いと言えます。そうではなく、自分自身にフォーカスする方がよほど改善の可能性があるということです。

一方でアンケートでは「分かってほしいと思わない」という意見もありましたが、個人的には非常に共感できるものでした。私も正直に言えば「妻を失った自分の気持ちは誰にもわかるもんか」と頑なになっていた部分もありますし、「二人にしか分からないことがあるんだから、理解されてたまるか」と思ったこともあります。

日々の深い哀しみの中で感情がぐちゃぐちゃになりながらも必死に考えた結果として「周囲に期待しすぎてはいけない」ということを学習したのを覚えています。

だからこそ、自らインプットとアウトプットを繰り返して、先輩経験者にアドバイスを求めたり、意見を伺ったりもしました。大げさに言えば「グリーフワークに対して主体的に取り組んだ」という事です。

今回のアンケート結果については「ああ、やっぱりか」というのが率直な気持ちです。10年以上前に私が死別体験をしてから何も変わってないと思いました。生死に関する日本人の知識や「死をタブーのものとする」という視点が根強く残っている以上、おそらく(非常に残念ですが)この先もあまり変わらないのだろうなと思います。

これから(そうあってほしくないのですが)死別を経験する人は、今回のアンケートと同様、「周囲には理解されない」という想いを少なからずするのでしょう。とても残念なことです。

 

今日はそんなことを想いながら過ごしています。

 

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dan325

10年ほど前に妻を癌で亡くしました。若年死別経験者。愛する人や大切な人の喪失や死別による悲嘆(グリーフ)について自分の考えを書いています。今まさに深い哀しみの中にいる方にとって少しでも役に立てれば嬉しいです。

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