コラム

【死別・喪失直後の方向け】今とても苦しいなら

遺族はその経年によって徐々に心境の変化がありますが、特に初期段階においては、非常に辛い時期や辛い状況、心境におかれることになります。

そうやって過ごしていく中で徐々に気持ちの変化はあり、そのグリーフプロセスの中で悩みは変わっていくのですが、今回は初期段階でのグリーフについて解説します。

現実を受け止められないのは当たり前

グリーフプロセスでの第1段階は「拒否」や「否認」と言われています。これは確かにその通りで実際に愛する人の死を目の当たりすると通常は「そんなわけない」「ドッキリでしょ」「眠ってるだけ」といった形で対応します。これは本能的なものなので間違っていません。ショックが大きすぎるため本能的に防衛しているだけです。

グリーフプロセスについて

この拒否や否認のあとに、ようやく現実を受け止める(=愛する人が死んだという事実)ことになります。しかし文字通り「受け止める」ことができるのは、グリーフプロセスの最終段階である「受容」なのです。

つまり「拒否」「否認」から始まったグリーフプロセスは「受容」までの間がとてつもなく長いのです。

なぜか焦ってしまう気持ち

これは私自身もそうだったのですが、「早く良くならないと」「早く元気にならないと」と特別な理由もないのに焦ってしまうのですね。

 

こうやってプレッシャーをかけていくと、全然元気になれない自分自身への失望も増えていきます。

ここでひとつ大切なことは「絶対に焦ってはいけない」ということです。自分に問いかけてみてほしいのですが、どうしても急いで元気にならないといけない「絶対的な理由」があるのでしょうか。

大切な人を亡くし、途方に暮れている自分の心よりも大切な理由があるのでしょうか。

もちろんそこに正当な理由があるなら、急いで元気にならないといけません。しかし、大抵はそうではありません。哀しみつつ生活をし、少しずつ適応するのです。自分の傷ついた心に嘘をついてだまし続けて元気なふりをするのは、長期的に見てもいいことは何もありませんし、むしろデメリットの方が大きい可能性があります。

周囲の声が最も大きい時期

またあなたのことを心配するあまり、周囲の声がもっと大きくなる時期でもあります。

あなたの周囲は、私たちのことを心底心配して声をかけてくれています。それは私たちも分かっています。だから反論できない。

でも私たちの本心はそうではありません。「まだまだ全然哀しいのに、もう哀しんではいけないの?」という疑問が頭をもたげます。

テレビを見ても、ご飯を食べても、買い物に行ってもそこかしこに愛する人がいるのです。姿が見えないだけであの人がいるのです。だからこそ哀しい。その時間、その瞬間が愛おしくてたまらない。そういう時間さえもう持つなというのか。

そんな風に思うようになります。

しかし決してそんなことはありません。一番優先しなくてはならないのは、自分自身の気持ち、心境です。たしかに日々移ろいやすく、不安定ではありますが、それは当たり前です。同じ状況になれば誰だってこうなるわけですから気にする必要はありません。

「今日は誰かにそばにいてほしい」と思う瞬間もあれば、次の瞬間には「今は独りになりたい」と思うこともあるでしょう。自分ではどうしようもないのです。分かっていてもコントロールできないのです。

つまり、そういう状況にもかかわらず「早く元気にならないと」と周囲に言われて「はいそうですね」とは言えないのは明白です。人の心はコントロールできません。そういう場合にはきちんと前置きした上でそっとしておいてほしいと伝えるべきでしょう。

このように周囲の声が最も大きい時期だからこそ、注意が必要になります。

周囲との一定の距離を保ちつつ、グリーフワークを

そして最も大切なのが日々のグリーフワークです。初期段階でのグリーフワークの参考例は以下になります。

他者の意見はいったん横に置いておく

これは前項と同じです。まずは「自分」と向き合わなければなりません。

アウトプットする

これは認知行動療法にも通じる部分がありますが、まずは自分の気持ちをしっかりと表現します。表現方法については、以下ページをご覧ください。

認知行動療法

言語化について

感情コントロールのサイクル

 

このように、アウトプットを行うことで自分自身の状況を確認することができます。哀しいことには変わりありませんが、まずは書き出すこと、表現することが重要です。

インプットする

アウトプットと同時に可能ですが、様々な書籍や映画などからグリーフに関する知識を取り入れます。それによって自分自身と同じ状況の例示があるかもしれませんし、何かヒントが見つかるかもしれません。自分だけが哀しいわけではなく、ほかの人の対応策も参考になるかもしれません。

理解している部分、まったくよくわからない部分などを切り分けることができれば、より良いでしょう。

外部の力を借りる

不安定な状態の自分だけでなく、外部機関を利用するというのもアリでしょう。グリーフカウンセリングやサポートグループ、医療機関など様々な場所でグリーフケアを行っています。

※ただし相性はあるので選ぶときには慎重に行いましょう。

今、この瞬間こそが最も辛いのですが、そんなときは「息をしているだけで素晴らしい」と自分に声をかけてあげましょう。

いずれにしても、実はグリーフプロセスの初期段階では、様々なイベント(四十九日や百箇日、一周忌、三回忌など)が重なったり、また引っ越しなど、大きく生活が変わってしまうこともあります。一番苦しい時期に一番大きな変化があるため、本当に大変なのですが、決して無理をすることなく、また「今の自分は十分頑張っているのだ」と認めてあげましょう。

愛する人との死別、愛する人を失うということは、言葉で言うほど簡単なことではありません。これほど生きることが苦痛だと思わされるイベントは他にはないでしょう。

だからこそ、決して無理せず、決して焦ることなく、自分のペースでグリーフプロセスを進めればいいのです。

 

今日はそんなことを想いながら過ごしています。

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dan325

10年ほど前に妻を癌で亡くしました。若年死別経験者。愛する人や大切な人の喪失や死別による悲嘆(グリーフ)について自分の考えを書いています。今まさに深い哀しみの中にいる方にとって少しでも役に立てれば嬉しいです。

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