コラム

生きる力

保険の商品名みたいなタイトルですが、中身は真剣です。

「生きる力」は喪失体験者にとっては対極のテーマでしょう。しかしだからと言って取り上げない訳にはいきません。なぜなら愛する人が先に逝ってしまっても、遺された私たちには何らかの意味があり、そう信じているからこそ生きなければならないからです。

そのためには、生きていくための力-「生きる力」が必要です。

あの人の居ない世界で生きることに意味はあるのだろうか

自分自身もそうでしたが、愛する人が旅立ってしまってから、「生きることの意味」について真剣に考えていました。そして何度考えても答えは見つかりません。「むしろ意味などないのではないか」とさえ思っていました。

「喜怒哀楽」のうち、喜と楽を奪われてしまった人生なんて苦痛でしかない。一体何の意味を見出せばいいのかわかりません。

あまりにも哲学的、概念的過ぎてしまって答えを出しにくいわけですが、直近では「生きる目的がなければ、生きる目的を見つけるために生きましょう」というのが答えになります。

そうすることで、大切な人が去ってしまったこの世界に留まる理由ができあがります。

生きるためには具体的に何をすればいいのか

さて何とか生きていくことを決めたものの、やはり簡単ではありません。自分自身も完全に無気力になったし、「お腹に力が入らない」感覚というが何年も続きました。踏ん張りがきかない、集中力がすぐ切れてしまうといったことを自覚していました。

本当にすぐエネルギーが切れてしまうような感覚です。

そんな中、ひとつだけ言えるとすればこれです。

生きる力が出てこなければ、まずは毎日の生活に1か所だけリズムを作りましょう。

これだけは死んでもやる(もう死ぬのは怖くないし)というものをひとつだけ作ります。

自分の場合は1週間に1回行う家の掃除でした。生前は妻と一緒に掃除していましたが、なぜか自分ひとりでもやり抜くのだという固い意志がありました。

「日曜日の午前中に(死んでも)掃除する」と決めてからはそれを守り続けました。もちろん土曜日にやることもありましたが、週に1回は掃除するというマイルールは徹底していましたし、正直に言えばそれしか守れませんでした。お仏壇を綺麗にして、部屋をきれいにしていました。それだけです。

あとはもう何もかもうまく行きませんでしたが、週に1回の掃除は、自分自身の意地、そして妻への約束のような気がしていたのです。

死別体験者にとっては、たったひとつのことを続けることすら困難な状況にあるといっても過言ではありません。

そんな中でひとつのことをひたすら続ける、というのは結構立派なことだと思うのです。

自分でできること

 

確かに、生きることを目標にするのはとてもしんどいことです。

そのため、もっと身近な生活レベルの目標(しかも比較的簡単にできること、変化が見えやすいこと)を設定しましょう。趣味でもいいのですが、やはり生活に根差した行動の方が分かりやすくていいと思います。

生きる力はそんなほんの小さなことから蓄積されていくのではないかと思います。

 

今日はそんなことを想いながら過ごしています。

 

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dan325

10年ほど前に妻を癌で亡くしました。若年死別経験者。愛する人や大切な人の喪失や死別による悲嘆(グリーフ)について自分の考えを書いています。今まさに深い哀しみの中にいる方にとって少しでも役に立てれば嬉しいです。

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